英国発祥のスポーツであるラグビーフットボール(Rugby football:以下ラグビー)は、強靭な肉体と精神力を誇るアスリートが楕円形のボールを用いてルールを元に陣地を取り合うスポーツである。‘スクラム’に代表されるチームメイトとの協調、‘タックル’に必要な勇気、そして試合終了により敵味方なく健闘を称えあう‘ノーサイドの精神’など、精神性を重んじる特徴を持っている。ラグビーは、‘紳士のスポーツ’の代名詞を持ち、英国では主に上流階級に広くプレーされていた。
いっぽうで、対抗戦と呼ばれる学校や地域、国の誇りをかけた戦いと交流を目的に競技されていた歴史もあったために、ラグビーフットボールの商業化はこれまで消極的であり、プロスポーツにみられる経済力を基盤とした合理的、戦略的なチーム強化は同じフットボールのサッカーやアメリカンフットボールと比較して遅れている。英国内の4カ国対抗戦は、1882年から1883年に第1回大会が開催され、1910年よりフランスも加わり、5カ国対抗ラグビーとなった。また、各国代表チームが優勝を競い合うワールドカップは、サッカーが1930年ウルグアイ大会に始まったのに対し、ラグビーは1987年のニュージーランド・オーストラリア大会からである。そのため日本も含めた各国代表チームの強化は比較的新しい動きである。
ラグビーには1チーム15人で行う15人制ラグビーと7人で行う7人制ラグビーが存在する。日本では15人制が一般的であり、世界規模でみても15人制ラグビーを統括するInternational Rugby Board(以下:IRB)の公式ホームページ(http://www.irb.com/)によれば、100ヶ国以上の国が15人制ラグビーを行っている。7人制ラグビーで使用するグラウンドは、15人制のサイズと同じであり、ルールも1試合の時間が15分から20分と短い以外はほぼ同じである。しかし各プレーヤーの走力や体力が15人制と比較して多く求められる‘過酷さ’を持ち合わせており、アスリートとしての個人運動能力をより多く必要とされる。
7人制ラグビーのワールドカップは1993年より開催されており、2009年に国際オリンピック委員会(以下IOC;International Olympic committee)がオリンピック競技種目として正式に2016年より採用することとした。その結果日本においても7人制ラグビーの代表チームのより良い競技成績が望まれることとなり、代表チームの強化が必要となっている。
7人制ラグビーは、1883年、スコットランド南部、イングランドとの国境近くにあるボーダーズ地方で誕生した。創立以来ずっと財政難に悩まされていたスコットランド メルローズのクラブチームを救おうと、資金調達のため15人制よりも実施しやすい、7人で行うラグビーを考案。メルローズクラブあげてのスポーツイベントに組み込んだところ、大成功。コンパクトかつシンプルな競技スタイルは、あっという間に近隣の街に広がり、1926年には、イギリス全国規模の大会である「ミドルセックス・セブンズ」が開催されるようになった。
1993年には国際ラグビーボード(IRB)主催の「ラグビーワールドカップセブンズ」が始まり世界一を決めるチャンピオンシップも生まれた。ワールドカップの優勝杯は、7人制ラグビーが誕生したメルローズクラブから由来し、『メルローズカップ』と呼ばれる。7人制日本代表は、第1回大会(1993年)から2009年、ドバイで行われた第5回大会まで、すべての大会に参加している。
1999-2000年シーズンからは、「7人制ラグビーはラグビーを世界的にプロモートし、発展させていくために理想的。より解りやすいゲーム、そしてハイレベルでエキサイティングなゲームを見ることができる」というIRBの考えから、「セブンズワールドシリーズ」が誕生。1999年12月の『ドバイセブンズ』を皮切りに、世界各地で行われる大会での成績をそれぞれポイント換算し、その合計で年間チャンピオンを決めるシステムが確立された。
アジアオリンピック評議会が主催し、4年に一度開催されている「アジア競技大会」では、1998年12月、タイ・バンコクで行われた第13回大会で15人制と7人制の2種目が正式種目に採用された。7人制日本代表は、1998年、2002年、2006年、2010年大会に参加。2006年大会より7人制の1種目となり、日本代表は、韓国を破って、初の金メダルを獲得した。続く、2010年大会でも2大会連続で金メダルを獲得。この2010年大会から女子7人制も正式種目となった。
日本では、1930年に7人制ラグビーが取り入れられ、4月に学士ラガークラブ主催の大会が開催(神宮競技場)、国内に広まった。
1959年には、横浜市中区のYC&AC(横浜カントリー&アスレチッククラブ)が主催の「YC&AC JAPAN SEVENS」がスタート。2010年度で52回目を迎え、伝統ある大会となっている。
1993年には、日本ラグビーフットボール協会が主催で、国内の大学、社会人チームを集めて、7人制日本一を決定する「ジャパンセブンズ」がスタート(1993-2003)前年度の全国大会上位チームが参加して始まった大会は、1995年から国際大会に発展。1999年までは海外チームが参加する国際大会として開催された。
2000年からは、「IRBセブンズワールドシリーズ(フォルクスワーゲンセブンズ)」の日本大会も開催された。(~2001年まで)このセブンズワールドシリーズ2000年の日本大会で、7人制日本代表は、プレート優勝を果たし、現在のところ、1999年香港で行われた「香港セブンズ」と並び、セブンズワールドシリーズでの7人制日本代表の最高成績となっている。
また、1998年からは「高校セブンズ大会」がスタート。少子化などの理由で部員不足に悩む高校チームに花園に次ぐ、7人制日本一を決める大会が誕生した。
現在は、「YC&AC JAPAN SEVENS」の他、全国高校生を地域ブロックに分けて行う「ジャパンセブンズ高校の部」、東日本大学を集めた「東日本大学セブンズ」、女子ラグビーでも「JAPAN WOMEN’S SEVENS」として大会を開催している。
また、2010年4月には前年の7人制ラグビー五輪競技正式採用を受け、国内チーム(女子も含む)による「セブンズフェスティバル2010 in TOKYO」が開催された。
■ラグビーワールドカップセブンズ (1993年から4年ごとに開催)
【第1回】 1993年 スコットランド / エディンバラ
【第2回】 1997年 香港
【第3回】 2001年 アルゼンチン / マル・デル・プラタ
【第4回】 2005年 香港
【第5回】 2009年 UAE / ドバイ
【第6回】 2013年 ロシア / モスクワ にて開催予定。
■IRBセブンズワールドシリーズ
2010-2011シリーズ 開催期間:2010年12月~2011年5月
開催地:ドバイ、南アフリカ、NZ、USA、香港、オーストラリア、イングランド、スコットランド
2009-2010順位表
国 名 | ポイント | |
サモア | 164 | |
ニュージーランド | 149 | |
オーストラリア | 122 | |
フィジー | 108 | |
イングランド | 96 | |
南アフリカ | 80 | |
アルゼンチン | 62 | |
ケニア | 52 | |
ウエールズ | 34 | |
アメリカ | 32 | |
カナダ | 15 | |
スコットランド | 12 |
■アジア競技大会
1998年第13回(バンコク)から正式競技として採用。
2002年大会までは、15人制と7人制ともに正式種目だったが、2006年大会より、7人制のみ実施。
日本代表は、2006年に初の金メダルを獲得し、続く2010年広州大会でも金メダルを獲得。
★15人制ラグビーとの違い
内容 | 15人制 | 7人制 |
試合時間 | 40分ハーフ | 7分ハーフ |
グランドの広さ | 同じ | |
スクラム | 8人 | 3人 |
得点(トライ) | 5点 | |
得点(トライ後のゴールキック) | 2点 | |
得点(ペナルティキック) | 3点 | |
得点(ドロップゴール) | 3点 | |
トライ後のリスタート | 得点されたチームのドロップキック | 得点したチームのドロップキック |
ゴールキック | プレースキック・ドロップキック | ドロップキック |
15人制 | 7人制 |
試合時間 | |
40分ハーフ | 7分ハーフ |
グランドの広さ | |
同じ | |
スクラム | |
8人 | 3人 |
得点(トライ) | |
5点 | |
得点(トライ後のゴールキック) | |
2点 | |
得点(ペナルティキック) | |
3点 | |
得点(ドロップゴール) | |
3点 | |
トライ後のリスタート | |
得点されたチームの ドロップキック |
得点したチームの ドロップキック |
ゴールキック | |
プレースキック ドロップキック |
ドロップキック |