香港・アデレード世界大会を終えて
【香港セブンズ大会】 昨年11月に中国・広州で行われた4年に1度の祭典、アジア大会で男子7人制ラグビー日本代表は、予選の4試合から決勝トーナメントの3試合、合計7試合全てに勝利して優勝、2大会連続で金メダルを獲得した。その背景には、選手確保から遠征、大会に参加して強化し、選手スタッフ共々成長してきた証がある。今季初のインターナショナルラグビーボード(以下IRB)主催、セブンズワールドシリーズ・アメリカ・ラスベガス大会では、日本がまだシーズン中ということもあり、ベストメンバーとは程遠かったが、シールド(13位―16位戦)ファイナルまで進むことができた。そして、2月末にはフィジーにてマリストセブンズ大会に参加、強化合宿3/1-10)を行った。選手選考では2011年NZワールドカップ日本代表スコッドとスコッド候補含む総勢57名は選出できず、実質5軍の編成によるヤングセブンズ日本選抜をピックアップ。今回そのフィジー遠征メンバーを中心にセブンズワールドシリーズ・香港、アデレードの2大会に参加した。 メンバーは以下の通り 1.ロトアヘア・ポヒヴァ(埼玉工大新4年21歳)、2.山内主将(トヨタ24歳)、3.レプハ・ラトゥイラ(近鉄26歳)、4.成田(サントリー25歳)、5.坂井(豊田自動織機新人22歳)、6.ロテ・トゥキリ(白鴎大OB22歳)、7.豊島(東芝新人/香港大会のみ22歳)、7.中濱(神戸製鋼新人/アデレード大会のみ22歳)、8.正海(同志社大新4年21歳)、9.鶴ヶ埼(東海大新4年21歳)、10.中づる(早稲田大新3年20歳)、11.シオネ・テアウパ(東洗グリーンファイターズ新人22歳)、12.シリバ・アヒオ(SANIX/アデレードのみ23歳) 東日本大震災の影響もあり、日本として参加を日本ラグビー協会に委ねていたが、出発予定日を4日遅らせて3月21日に出発。しかし、数チームの選手は会社や大学からOKが出ずに不参加。そのような影響もあり、平均年齢23歳という今までにない若さのセブンズ日本代表が終結。このチームのキャッチフレーズは「絆」、アジア大会同様、トライをした後には胸に手でハートを作って震災で大変な状況下にいる被災者たちに世界からメッセージを送ろう、みんなと感動を分かち合おうと約束した。 香港ではさっそく練習試合の相手にフィジー代表やニュージーランド(以下NZ)代表が名乗りを上げてくれた。いつもはこちらからお願いしているのだけれど、フィジー代表監督のタニブラや、NZ代表監督のティッチェン監督とは4年目の付き合いということ、お互いに震災があった為、強い絆を感じることができた。そして、予選が始まった。 4チームのグループが6つ、合計24カ国が集まった世界一大きな大会、香港セブンズ大会に初めから連続出場している日本代表のプールには、前大会までNZ代表と1位を分け合っているイングランド代表、昨年アデレード大会で始めてカップ戦に進出して、決勝戦まで戦ったことがあるアメリカ代表、アジアのライバル中国代表が入っている。 |
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3月25日(金)予選1日目 20:38キックオフ ●日本代表 vs アメリカ代表〇 初戦、しっかりした準備から選手たちは飛び出していくも、香港セブンズの雰囲気にのまれ敗戦(経験者はレプハと成田のみ)。しかし、良いトライもあって。 |
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3月26日(土)予選2日目 14:10キックオフ ●日本代表 vs イングランド代表〇 前半、ロテの個人技のトライもあり7-14。後半早々に連続攻撃から最後はSO坂井のキックパスをインゴール手前でロテがキャッチ、そのままトライ!ゴールも決まって14-14の同点になったとき会場が揺れるほど盛り上がっていた。 |
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3月26日(土)予選2日目 16:22キックオフ 〇日本代表 vs 中国代表● 2トライを選考されて苦しい展開だったが、後半終盤に追いつき、ラストプレーでテアウパが70m独走トライを決めてノーサイド。 |
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3月27日(日)決勝トーナメント ボウル1回戦 10:28キックオフ 〇日本代表 vs スコットランド代表● 19(前半7-14)14 勝利 この試合も2トライ取られて追いかける立場になったが、脅威の粘りと勝ちたいという気持ちを前面に押し出したプレーを魅せ、最後は坂井がテアウパとのループプレーから抜け出しトライ。スコットランド戦は1999年以来13年ぶりの勝利となった。 |
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3月27日(日)決勝トーナメント ボウル準決勝 14:47キックオフ 〇日本代表 vs アメリカ代表● 14(前半0-12)12 ラスベガス大会を含めて今季3度目の対戦は、この試合も2トライされての苦しい展開だったが、今大会絶好調の成田が抜け出し、坂井のトライをアシストする等で逆転。最後は気力でアメリカの攻撃を寸断しノーサイド。ボウル決勝は1999年プレート決勝以来。1999年最高位の世界9位に挑む。 |
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3月27日(日)決勝トーナメント ボウル決勝 17:47キックオフ ●日本代表 vs カナダ代表〇 12(前半5-19)33 予選も含め、3日目合計6試合目、相手はコアチーム(12チーム)のカナダ代表。この試合も立ち上がりから2トライを許して苦しい展開。1トライ返すもさらに追加トライを許し5-19。しかし、ここまで3試合逆転で勝ちあがってきたジャパンに2トライ差は射程圏内。しかし、後半先にトライを奪ったのはカナダ代表。最後まで諦めずに戦ってくれた選手たちに感謝したい。 |
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■男子7人制日本代表 村田亙監督 「日本がまだ大変な状況の中、大会に参加できたことに感謝します。香港では毎試合日本への声援が大きく、我々が力をもらいました。アジアの中から唯一ベスト16に残り、スコットランドに1999年以来の勝利、アメリカとは今季4度目の対戦でようやく勝利することができました。ボウルの決勝まで進んだ選手たちを誇りに思います。決勝のカナダ代表には敗れてしまいましたが、選手は日本のプライドを持って戦ってくれました。何よりも試合後、場内を一周したときに、観客の皆様からの日本への声援は、一生忘れることのできない経験です」 |
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■男子7人制日本代表 山内貴之主将 「このような状況で大会に参加させていただいたことに、周囲の皆様すべてに感謝します。今回のチームは若い選手中心でしたが、3月上旬に行ったフィジーの強化合宿でチームになれていたことが、大きかったです。ボウルの決勝に進めたことは、これからの可能性も含めポジティブにとらえています。 今回は、地元メディアからも震災の件で多くのインタビューを受けました。我々選手は、もっとよい結果を出して、日本のみなさんに元気を届けたかったです。しかし、プール戦最終戦からボウル準決勝まで逆転で勝ち進めたのは、チームと自分を信じ、日本を思い、勇気を持ってプレーできたからだと思います。今回は多くの観客やメディア、一般の方からも、日本へのお悔やみとお見舞いの声をかけてもらいました。そのみなさんにありがとうと言いたいし、自分自身も、グラウンドの中だけではなく、日本に戻ってからも義援金や自分たちができることをしっかり考え、行動に移したいと思います」 平均年齢23歳のヤングジャパンセブンズチームが魅せてくれた絆、チームワークはアデレードでも機能して活躍するであろう。 |
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【アデレードセブンズ大会】 香港セブンズ大会4年目、過去最高の結果(10位/24チーム)で終え、翌々日アデレードに移動したセブンズ日本代表は、ホテルから2km先の公園までジョギング、ストレッチ、帰りもジョギング後、プールリカバリーを経て食事。この日はケアも含めて積極的に休養をとる日にした。水曜日は二部錬、木曜日は午前中に一部練習を行い、午後は積極的休養、金曜日は1日オフにして心身ともにリフレッシュ。土曜日から予選が始まった。 |
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初戦 ●ジャパンvsサモア代表〇 7(前半7-7)40 二戦目 ●ジャパンvs南アフリカ代表〇 12(前半12-0)21 三戦目 ●ジャパンvsフランス代表〇 7(前半0-26)40 15人制ではあまりない対戦相手だが、セブンズでは当たり前のようにこのようなチームと戦わなければならない。結果だけ見ると3戦全敗だが、サモア戦前半は7-7、南アに関しては12-0とリードして良い雰囲気で後半戦に挑むことができたのだが・・・。 サモア戦敗戦後、南アフリカ戦では坂井やレプハ、成田や今大会から初出場の中濱が活躍、前半2トライ取って12-0とリード。後半途中までこのままだったが、終盤に3トライ返され12-21の惜敗。南ア戦、今まで1番善戦した戦いを演じてくれたヤングジャパンだったが、12-14から駄目押しトライを奪った南アの選手の喜びようは、それだけジャパンが南アを苦しめたということ。ポジティブに捉えて次戦に備えた(仏戦完敗)。 翌日決勝トーナメント・ボウル1回戦の相手はアメリカ代表。今季4度目の対戦は終盤までもつれ込み、ホーンがなるまでリードしていたのはジャパンだったが、その後ボールを繋がれ最後にトライを許し19-22の惜敗。シールド(13位―16位)トーナメントに回ることになった。 シールド準決勝では、クック諸島相手に前半から選手全員がブレイクして31-21で勝利。よくこの短時間で気持ちを切り替えて戦ってくれた。決勝の相手は昨年同様トンガ代表。フィジカルがとても強いチームで、3年前の就任当初は同じアデレード大会で50点以上取られた相手。しかし、昨年もトンガに勝利して優勝したメンバーは成田1人のみ。その成田も4年目にしてレギュラーポジションを獲得して挑んだ最終戦。前半は一進一退の攻防が続いたが、後半に突き放して22-5で勝利。2年連続でシールド優勝を成し遂げたセブンズジャパン。今回は平均年齢23歳という若い世代にシフトしたメンバー構成だったが、みんながひとつの心で絆を合言葉に団結したチームの勝利と言える。このメンバーはこれで一度解散するが、また元気な姿で次の大会に準備して欲しい。なぜならこのメンバーが2年後ロシアでの最後の祭典、セブンズワールドカップ、5年後リオデジャネイロでの祭典、オリンピックの中心選手になるはずだから。みんなありがとう。 |
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■男子7人制日本代表 村田亙監督 「香港セブンズを終えて、チームとしては調子がよかったと思います。今回のオーストラリアでどれだけ戦えるか楽しみでした。プール戦で南アフリカに後半5分までリードをして、結果敗れてしまいましたが、南アフリカを相手にそれだけ戦えたことは、選手たちは自信を持つことができたのではないでしょうか。 今日はボウルトーナメントの優勝を目指しましたが、アメリカ戦は最後終了のホーンが鳴った後に逆転されてしまいました。しかしその後は気持ちを切り替え、シールドトーナメントの準決勝、決勝とフィジカルの強いチームに日本らしいラグビーができたと思います。ラトゥイラ選手、山内主将、成田選手などトップリーガーとして体を張って奮闘してくれました。坂井選手はキック(キックオフ、コンバージョン)でチームに貢献してくれ、おかげで試合を組み立てることもできました。オーストラリアから参加の中濱選手もボールをキープしてチームに貢献してくれました。 シールド優勝できたことで、チームを誇りに思いますが、その優勝は我々の力だけではなく、支えてくれた周囲のみなさん、サポーターのみなさんのおかげです。 今回の遠征は震災の影響が残る中、我々が何ができるか話し合いましたが、プレーで見せるしかないという結論にいたりました。これからもチームの成長をはかるとともに、ラグビーとして何ができるか、考えていきたいと思います。ご声援ありがとうございました」 ! |
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■男子7人制日本代表 山内貴之主将 「このオーストラリア大会は、プール戦は全敗となってしまいましたが、最終的にシールドトーナメントで優勝できたことは、素直に嬉しく思います。大会を通じて、小さな怪我をした選手もいましたが、最後までチームとして踏ん張れました。 今回、主将として臨んだ遠征でしたが、いつもと変化はありませんでした。主将という肩書きはついていましたが、特に気負いはなく試合をできたと思います。ただ、1日目に足を痛め、出られなかった試合はもどかしかったです。南アフリカ代表戦では、出場した選手たちが積極的にボールをキープし、特に前半は攻め続けたことが、善戦につながったのだと思います。 日本代表はチームとして潜在能力があるので、それをコンスタントに出せるかが、これからの課題だと思います。 現在、日本が大変な状況の中、香港、オーストラリアと遠征できたことに感謝します。今回の遠征で得たものを、今後チームや個人として生かして、恩返しをしていきたいと考えています。応援してくださった皆様、支えてくださった皆様、ありがとうございました」 |