村田亙 オフィシャル ウェブサイト

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専修大学ラグビー部監督 村田亙 インタビュー 第2弾

前回監督コラムのインタビューで漏れていた話しを全て掲載!

「リオ五輪の前に専修大学」

――専大ラグビー部の監督就任に至った経緯を教えてください。

  監督に就任する前の1年間はアドバイザーで関わらせてもらっていた。当時の監督で中々結果が出ない時期に、上の方から『来季7人制は置いといて、まずは自分のチームを立てなおしてくれないか』と監督就任の打診があった。
ただ、『ああ早かったな、もう来たか』と。私としては7人制ラグビー日本代表の監督としてリオ五輪に行きたい、という思いもあったけど、まずその前に専修大学だと。専大ラグビー部が10年間も2部にいたという今までの経緯を考えると、私が監督をするという事が専大OBの一番の願いであったと思うし、私が監督になることで学校がどんどん変わっていくのであれば、ということも期待したのだろう。だからやるしかないと。
以前私が出た専Sation (第4号)の特集で、いつかは専大ラグビー部の監督になりたいということを言っていて、それが少し早まったかなというだけのこと。リオには行けなくても、その次の東京は狙える。専大で結果を残して、東京五輪では7人制ラグビーの日本代表監督をやるというのは夢。専大ラグビー部の監督になって3年経ったけど、本当にいい仕事させてもらっているなと思う。自分が好きなことが今仕事になっているから。


――正直、もし代表監督もう一度やってくれませんかというオファーが来たらどうされますか?

  断るよ。まず断る。『自分に時間があるときは、代表のサポートもできますけど、監督とかはできない』とはっきり言える。なぜなら今はこっちの夢をしっかり追わないと二兎は追えない。



2014,12,13 熊谷ラグビー場
「今の専修大学を見てほしい」

――今年は専大体育会を通して見ても結果を残した部活が多かったと思います。
明るいニュースがとても多かったので、そういったニュースの影響を受けることはあったりしましたか?


  当然。一番影響を受けたのは野球部。同じ伊勢原のグラウンドで一緒に頑張ってきて、先に一部に上がられて、すごくいい刺激になった。


――専大は古豪と言われる部活が多いと思います。ラグビー部もそういう括りに入ってしまっていた時期があったと思うのですが、そのことについてはどうお考えですか?

  それは過去のこと。野球も今までで一番優勝していると言われているけど、そういうのは過去の話。過去というのはどんどん消していかないと新しいものは入ってこない。 私自身の過去の栄光というのも数多くあるけど、いつまでも過去の栄光に浸っていると自分の成長は無い。だから全部忘れる。それで私は今何をやっているのかというと、専修大学のラグビー部の監督。専大を勝たせることが今度は私の評価につながってくる。 もちろん『昔は強かったのになんで今は』って言う人もいるんだけど、今の専修大学を見てほしい。


――昔の時代と比べて大学スポーツを観る生徒か少なくなったという話を専大OBの方のお話でよく聞きます。今、専大の体育会か強くなってきているこの時期に、どうしたら学生に大学の部活を観てもらえるようになるのか、監督ご自身はお考えになったことはありますか?

  やっぱり練習を見に来て欲しい。どれだけ激しいことをやっているかというのを。あとは授業のカリキュラムで年に4回は伊勢原に来て、ラグビーと野球を体験するとか。それはラグビーも本物のラグビーじゃなくて、今ならタグラグビーやタッチラグビーという、危険の少ないラグビーかある。それを午前中はラグビー、午後は野球をやって、昼食を体育寮で一緒に食へるとか。そういうことをすれば、『こんなところでこれだけ頑張っているんだな』というのを感じてもらえる。そういうことが必要なんじゃないかな。
本当はキャンパスの隣でラグビー部だったり野球部だったりが練習していれはいいんだけど。あとは昼休みにテレビやモニターでラグビーの試合や野球の試合のダイジェストを流したり。その中の選手へのインタビューで『あっ、この人経済学部なんだ』とか 『この人ラグビー部だったんだ』とか思ってもらえればいい。体育会の学生と一般学生とのコミュニケーションができる場が欲しい。



「来季、期待する選手は“全員”」

――4年生が抜けた穴というものが非常に大きいと思いますが、その穴を埋めるためにはどういったことが必要だと思いますか?

  今回の4年生は本当に頑張ってくれた。ある意味歴史を作ってくれた4年生だった。 棚橋が主将だったけど、それをカバーしたのがフォワードの棚谷(慎太郎・商4・秋田工高)、 バックス司令塔だった北田光司(商4・常翔啓光学園高)。北田が影の主将 としてチームをまとめてくれていたことは大きい。プレーでもそうだけど、ああいう明るい性格の子をまた新たに活かしていかなきゃいけない。


――4年生に贈る言葉はありますか?

  4年生には『本当にありがとう』と言いたい。『本当にお前らが歴史を変えてくれた』と。 一生残るから、今年のメンバーは。選手22人にマネージャーを入れて23人。本当に4年生はよくやってくれたなと。今年の棚橋組というのは、4年生ががっちり固まったいいチームだった。


――特に監督の期待する選手はいますか?

  これは 全員なんだけど、その中でも3年生。3年生は自分たちが来年4年生となってチームを引っ張っていくことになる。最上級生が誰一人欠けずに同じ方向、同じベクトルを向いて引っ張っていってくれれば、それに対して3年生以下はついてくると思う。だから特に期待したいって言ったら選手全員なんだけど、その中でも3年生、今度の4年生になる選手たちには、本当にチームを引っ張っていってもらいたい。



「“規律”と“対話”」

――就任からの3年間を振り返っていかがですか?

  私自身は“規律”という意味で厳しい指導者だったので始めは大変だったと思う。今季の4年生が1年生の時、私は7人制ラグビー日本代表の監督をしていたので専大ではアドバイザーという形だった。そこまで選手たちの中に入っていかなかったけど、アドバイザーの時は怒らなかったから。当時の選手たちは理想のアドバイザーくらいに思っていたんじゃないだろうか。
でもアドバイザーから監督になった途端、『俺ってどうしてこんなに怒んなきゃいけないんだろうな』ってくらい初めの方は怒っていた。それだけ規律が守れていなかった。 ルールを普段の生活から守っていかないと、試合でもルール守れない選手が出てくる。プレーと生活面は全て直結するから。だから自分を変えてでも指導していかなければならない部分もあった。相当厳しく当たり前のことを伝えてきただけなんだけど、その当たり前のことを当時の選手たちがまだできていなかったから。例えばゴミが落ちていたら拾って捨てる、下駄箱に靴をちゃんと中に入れる。注意散漫だったので、そういうところを直していかないと。この後社会人になった時に自分たちが困ることなので。やっぱり自分のことは自分でやらなくてはいけない。そういうことをずっと言い続けてきた。監督になって、四六時中一緒にいたからこそ、みんなの行動がわかってきた。


――監督が選手と向き合う際に大切にしていることはありますか?

  監督就任1年目に部員全員と年間で4回ずつ個人面談をした。なぜなら指導者が私一人しかいなかったから。1人あたりの時間は短かったけど。でも昨年から大東コーチが来たこともあって、昨年は1人に対して 30分位やった。今年は長い選手で1時間くらい面談をしている。それくらい会話してコミュニケーションとって、お互い良いところ悪いところ指摘し合って、要求し合う。中には『なんで僕はレギュラーじゃないんですか』って言いに来る選手もいる。でもそこは指摘してあげなきゃいけない。指摘してあげると、選手たちはそこを意識するようになる。やっぱり対話が大事。『話したいことがあるなら、どんどん監督室に来い。来て言いたい事を話せ。俺はいつでも空いているんだからどんどん言いに来い』って選手たちに言ったら、少しずつ私に言ってくるようになった。

no side 専修大 30-24 日大


「最終的に組みたいメンバーを逆算する」

――選手の起用法について教えてください。

  完全実力主義。例えば4年生と1年生で同じレベルであれば、私は4年生を使う。1年生よりも。


――それは経験の差が大きいということでしょうか?

  経験とそこまでにやってきた努力の積み重ねと責任感は、1年でも多くやった選手の方が持っているはず。けれど例外もある。例えば今季たくさん試合に出た池田大芽(経営1・ 秋田中央高)。彼はもしかすると開幕の時には4年生よりも劣っていたかもしれない。ただし、最後の入れ替え戦までには大きく成長して、必ず最後には必要な選手になるだろうという予測の元、彼のように使い続ける選手は何人かいる。それは期待を込めてということもある。私の場合、最後にどんなメンバーでどのような戦い方をしたいか、ある程度逆算して、チームを組むことがある。しかし、良い意味で期待を裏切って下のチームから出てくる選手もいる。


――監督が選手を起用する具体的な基準はありますか?

  3つのセレクションポリシーというのを監督就任当初に掲げた。まずはディフェンスができる選手。次にボールをキープできる選手。最後にアタックでもしっかりファイト出来る選手。この3つというのは今でも変わらない。その前提として、ディフェンスができる選手というのはやはり信頼される。それが今年の主将だった棚橋(宗一郎、経営4・國學院大栃 木高)。そんなに器用でなくてもディフェンスができるからみんな付いていく。アタックでボールキープできないってことは体が弱いということだから、体を強くしろということ。しっかり当たってもボールさえキープしてくれればそのボールというのは次に繋がるわけだから。最後に敵に負けない、1対1でしっかりファイトできる、やられたらやり返すというハートを持った選手。こういう選手が今のうちのAチームに居たわけで、こういう選手が今少しずつ増えてきている。やっぱり諦めちゃいけないし、この間の入れ替え戦みたいに最後まで諦めないから、最後は勝つことができたのだと思う。



「“規律”を守りながら魅せるラグビー、楽しいラグビーをしたい。

――理想の指導者像はありますか?

  理想は恩師でもある法大の谷崎監督。私が東福岡高に入った時、就任2年目の新米監督だったんだけど、当時すごいスパルタで厳しい練習を3時間以上やっていて。その東福岡高というチームは9割が素人で、経験者が1割しかいなかった。私が入学した当初は県大会にも出られないチームだったのが、その監督が来ただけでガラッと変わって。その監督が私に常日頃言っていたことは、『お前の好きなようにやってこい』。それがけで救われるというか、みんなには厳しいのに、私には『お前の自由にやっていいから』と言ってくれたことをずっと忘れていない。そこからラグビーの楽しさを知った。


――指導者としての哲学は何かありますか?

  哲学という意味では、やはり“規律”かな。“規律”を守りながら魅せるラグビー。楽しいラグビーをしたい。観ていて楽しいラグビーをしていればファンもどんどん増えていく。 私は現役時代にフランスでもプレーしていたので、フレンチラグビーを体感している。だからこそ、フランス代表のシャンパンの泡が弾けるようなシャンパンラグビー、全員がグラウンドを幅広く使うようなラグビーをしたい。そういうラグビーをするために、就任してからの2年間は布石だった。選手たちは大変だったと思うけど体作りとフィットネス、それしかやってなかった。今年始めたフレンチラグビーの第1章はまだ始まったばかり。


「指導者としては学生生活の後のことを考えてあげなければならない」

――選手たちを指導するのに大事なことは何ですか?

  うまくONとOFFを使い分けることが大事。いつも楽しいのはつまらないだろうし、やっぱりどこかで厳しさは必要、そこをいかに指導者が状況を見ながら一気 に上げるのか、それとも一回落とすのかという。ラグビーは試合も練習も動いている生き物なので。疲れたら休ませなきゃいけない。休ませ過ぎても今度は体力が戻らない。そういったことを四六時中、大東コーチと寺井トレーナーと私の3人で考えている。ただ、選手と言っても学生なんでね。まずは学校に行かせること。指導者としては学生生活の後のことを考えてあげなければいけないから。ラグビーの指導はするんだけど、それがいつの間にか人間教育の場になっていて、良い選手を社会人に送り込む。社会人になったらもっと長い。 人生半分どころか3倍も4倍もあるわけだから。でも大学にいるのはたった4年間しかないわけだから、選手たちにはラグビーのことを第一に考えて、それでしっかり勉強して自分が次のステージへ行くことをプランニングしてほしい。


――監督が練習メニューを考えるときに意識することはありますか?

  練習の質と時間は良い意味で2時間以上練習したことがほとんど無い。一つの枠を最大2時間にして、短い時間で効率よく練習する。他にもしっかり食事を食べさせなきゃいけないし、後の時間を計算しての計画なので。2時間以上やったということは無い。全体練習の後に個人練習とかするから、それを含めたら2時間を超えることはあっても、結局ラグビーの試合というのは1時間30分で終わるから、それ以上やる集中力はいらない。実際それ以上やっても無意味だったりする。一番大事なことは1時間半、試合の時間、その時間を集中して練習できるかどうか。

”専修革命”Revolution 2014


「選手たちの体つきが変わっていくのが楽しみ」

――1、2年目はディフェンス、フィジカルトレーニングメイン、今年はアタッキングに重点を置いた指導中心でしたが、来年はどういったことを重点的に指導していかれますか?

  まずはさらに体を大きくしていかないと。見ての通りまだまだ1部のチームは大きいので。まずはサイズアップを図る。


――それでも、今季の試合では専大の選手が倒れている場面は少なかったように思うのですが。

  うちの方が小さいんだけど、全部向こうが倒れる。コンバット(レスリング)セッションのおかげかな。それだけ芯ができて強さが出てきたから、やってきたことは間違いない。あとはしっかりボリュームをつける。余計な脂肪はいらないから筋肉の鎧で固めてくれれば、小さくても強いっていうことが証明できる。だからこれから選手たちの体つきが変わっていくのが楽しみ。それとともに 今のスピード、スタミナ、スキルを全部一気に押し上げる。押し上げて初めて同じ舞台に立てると思う。


2015 ”専修旋風”Sensation New Member 18名
(インタビュー:専スポ編集部/2014年12月)